470馬力の181系
1.書き換えられる性能曲線
前述のようにキハ181系の過大な出力は燃料噴射量を絞ることにより徐々に”適正化”されるようになりました。 それまで181系は搭載するエンジンの燃料噴射量にばらつきがあり、同じフルノッチでも発生していた出力には個体差があったわけで、これがあの音のばらつきと関係していたのかもしれません。 しかもその設定の多くが定格を越える方向に向いていたのです。 ものすごいターボ音を響かせて走っていた車両は定期整備で工場入りして”適正化”されて帰ってくると、別物のように穏やかな音に変わっていった例がしばしば見られたのです。
(SS氏のご好意による)
当然、大半の車両が適正化されれば平均性能も落ちるわけで、性能曲線、運転曲線も書き換えていく必要があります。
下の図は各気動車の10パーミル登り勾配の均衡速度を示すものです。
このリストは昭和46年に伯備線経由特急「おき」が投入される時期に作成されたものです。 当時は181系が本来の設定性能である6ノッチ590馬力で走った場合の速度種別が記載されていました。 このリストの下の方にある181系の欄で、6M1Tおよび9M1Tの欄が修正され、124km/hを115km/hに、129km/hを122km/hにそれぞれ書き換えているのがわかります。
これは本来連続定格500馬力(30分定格590馬力)で計算していたものを、連続定格470馬力にパワーダウンして計算しなおしたものなのです。 これは後年「やくも」用に計算されたもので、四国の「しおかぜ」、「南風」では480馬力設定、山陰東部の特急も同様に480馬力で計算されました。7Mの場合、速度種別はA32からA28に低下します。 こうすることでフルノッチ運転時にエンジンが発生する出力は550馬力前後に収まることとなり、ちょうど183系500番代なみの性能に抑えられたのです。
なお、同じ時代でも唯一、山口線特急「おき」だけは500馬力のまま計算されていました。 勾配が少なく曲線の連続だったためフルノッチ運転は少なく、あまり負担にならなかったのかもしれません。
2.運転時分に影響したか?
編成出力が運転時分に与える影響が意外に少ないことを先に見てきましたが、470馬力化された「やくも」への影響を見るため、伯備線で同様のシミュレーションをやってみましょう。
走行区間は岡山ー出雲市とし、より影響が出やすいよう、全線120km/h設定としました。 編成は上の表にある、181系6M1Tです。 M車の出力を300馬力から800馬力まで変化させて見ました。 編成出力は1800馬力から4800馬力の変化となります。
これを見ると、470馬力と500馬力で1分程度の時間差が生じます。 たかが1分ですが、駅間基準運転時分が変更される区間もあり、ダイヤ査定上は影響が出てきます。
参考までに燃料消費量の変化のグラフも示しておきます。