千馬力間近

1. ついに

 1996年、本当に電車並みの性能を持つ気動車が誕生しました。 なんと1両に900馬力ものエンジンを搭載したキハ201が北海道に現れたのです。 731系電車と併結し総括制御、電車のお荷物にならないように性能設定され、1M2Tの電車を押すほどの性能となったのです。 その後、出力を920馬力に向上して261系へと発展、1両1000馬力は現実のものになろうとしています。 キハ181は当時すでに電源用とあわせ730馬力のエンジンを搭載していました。 発電機搭載もあって床下スペースが不足、重量制限で屋根上ラジエータは使えず、運転室後部に大きな放熱機械室を必要としました。
 キハ201、261ではすべて床下に機器を装備し、重量も181系より軽量となったのです。 それまで新世代の気動車と言えども搭載機関の出力は700馬力どまり。 冷房やコンプレッサなど補機駆動の損失を考えると、無謀な設定とはいえ590馬力運転の181系から見ると劇的な高性能ではありませんでした。 しかし900馬力にもなると状況は大きく変わってきます。 そしてこの性能はキハ187へも受け継がれ、ディーゼル特急は1両900馬力というのが標準となったのです。

 下の図は187系2M281系7M885系3M2T787系4M3Tの加速曲線です。

 さすがに885系3M2Tにはかなり遅れますが、一世代前の電車、気動車を大きく引き離しているのがわかります。 187系では30キロからすでに直結状態となり、効率の悪い液体変速機は出だしのみしか使用しないという徹底ぶりです。

 下の図はディーゼルの苦手な中速域の加速特性です。 60km/hからの加速を見ました。

 787系電車にかなり迫られていますが、高速では徐々に引き離しています。 「さらに上を睨んで」で書いたように160キロ運転気動車としても問題ない性能といえるでしょう。 187系では4回の変速があるため途中に加速中断が生じるため計算値よりさらに加速が悪くなる面もありますが、補機フル負荷(夏の冷房、冬の電気暖房中など)想定での性能ですから条件がよければさらに加速はよくなるため、この計算値以上の性能で走る機会が多いことになります。 一昔前にはガスタービンでしかなしえないとされていた性能をディーゼルで手に入れることができるようになったのです。

2. スーパー北斗160km/h運転

 こうなればやってみないわけにはいきません。 281系は本来140km/h可能なためそのまま使用し、187系は減速比を1.988までハイギヤード化という仮想の改造を施したことにして160km/h運転の効果を見てみましょう。 舞台は当然函館・札幌間とします。 通過列車の分岐器制限は最高速とし、曲線通過速度は本則+30km/hとしました。

 平坦な直線区間が多いためいたるところで最高速まで加速できます。 特に東室蘭-苫小牧間で160km/h運転効果は大きいものとなっています。

281系をそのまま使って140km/h化した場合で現行最速より4分の短縮となります。 187系の改造車で現行より11分の短縮という結果です。 187系は耐寒耐雪構造ではないためその改良による3トンの重量増を加味して計算しています。

 分岐器改良なしで現行並みの通過速度とした場合は下のようになります。


 現行より8分の短縮が得られ、それなりの効果はあるでしょう。 信号改良、踏み切り対策などの問題が残されていますが、非電化でも160km/h運転は現実的なものとなっています。 160キロ運転用キハ287誕生(?)の日が待たれるところです。

3. スーパーおおぞら160km/h運転

 スーパー北斗でやるならばこちらもやらないわけにはいきません。 しかし、こちらは線形がより悪く、曲線通過速度向上のほうが有効です。 281系で140km/h運転、曲線通過30km/h増とすることで現行最速より12分程度の短縮となるようです。 一方187系改造車160km/h運転ではそれに比べて4分の短縮にとどまります。

運転曲線でも160km/h出せる区間は比較的少なく、さらに高速化するには大幅な線路改良が必要となります。

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