さらに上を睨んで

1.目標は130以上?

 JR四国に負けじとJR北海道でも振子式ディーゼルを開発しました。 
しかもこちらは長大な直線を持ち、連続高速走行可能、そして厳しい気象条件での使用が前提という、2000系とはまた異なる性質の気動車として281系が登場しました。 制御振子を踏襲する一方、更なる高速化を視野に入れ、直結段の変速機は3速となり、キハ81、キハ183(初代)に続く3代目の高運転台となったのです。
 そしてこの気動車は130km/h運転以上を視野に入れた設計となっていました。

 下の図はキハ281系7M2000系4M485系8M4T(直流)485系8M4T(交流)それぞれの加速力を比較したものです。

 軽量な2000系に一部劣る面もありますが、3段変速に物を言わせて重い車体を引っ張っています。 強力な485系8M4Tの直流過負荷運転にはやはり及びませんが、交流運転なら中速域でもほぼ同等で、高速域は圧勝といった高性能です。 33パーミルでも70km/hを誇り、直流区間を定格電流で走る485系に並びます。 25パーミルは90km/hとやはり定格電流の485系並で、卑怯な手ですが、もし全車冷房オフなら100km/hも可能となり、定格運転のキハ391をも凌駕します。

 

2.高性能ブレーキ

 281系に採用されたブレーキはこれまで気動車に採用されたもので最も高性能なものでした。
高速湿潤環境あるいは過熱された環境でも摩擦力が低下しにくい新開発の鋳鉄制輪子と、高精度で車輪のロックを検出し、ブレーキ力を緩め、しかも緩めすぎないように予測制御する画期的なシステムが採用されました。
 こうして雨天、降雪時でも140km/hからの非常制動で600m以内に停止できる制動力を獲得、130km/h運転は余裕の領域となったのです。


3.出るか、160km/h気動車

 JR北海道なら当然これを期待したくなります。 勾配の少ない長い直線区間が多い線区を抱え、しかも新幹線が来るのがいつになるかわからない状況では、何とか手軽に高速列車を走らせられないか考えたくなります。
 281系クラスで160km/h運転が可能か試してみましょう。減速比は1.9程度にする必要があります。 下の図がその時の加速力曲線です。 参考にJR西日本の160km/h対応電車681系も同時に示しました。

 さすがに加速性能は低下し、10パーミルでは3速に入るかどうかといったところ。120km/hがせいぜいという状況になってしまいます。25パーミルは2速に入らず、3M6Tと動力車がわずかに3両しかない電車と比べてもかなり不利になってしまいます。 平坦線の加速性能を比べてみましょう。

160km/hまで加速するのに8km走る必要があり、電車にかなり遅れをとります。 100km/hから160km/hまで加速するのに7キロ近く走る必要があり、かなり線路条件がよくないと難しいようです。 ではもっと出力を上げたらどうでしょうか。 1両当たり200馬力強化して910馬力にしてみたのが次の図です。

 電車との差もかなり少なくなり、高速では勝つようになります。 10パーミルも160km/hで上り、25パーミルもなんとか110km/hを越えます。

 加速性能もよくなり、中間でも電車並みの加速、高速では電車を凌駕する状態です。

 こうみると、条件さえ整えば160km/h運転の気動車が出現してもおかしくない時代になっていることを実感できます。 このシミュレーションでは出力増加に伴う駆動系の重量増加を無視していますが、すでに1両920馬力の気動車が登場している現状を見ればそれほど無理なものではないと思われます。

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