キハ181系誕生
1.急行に負けない特急
キハ91系の登場で付随車を組み込んでもキハ58最強編成に負けない性能となりました。その後、気動車急行も冷房化が進み、2M1m以上の比率で2エンジン車を組み込むことができなくなり、急行も冷房設備による重量増と相まって82系特急並に性能ダウンすることとなりました。
下の図は当時の主要な長大気動車列車と181系「つばさ」編成、そしてDD51重連牽引の12両編成の客車列車の加速性能比較です。
(SS氏のご好意による)
キハ82はDD51重連牽引とほぼ同等の加速となります。キハ58はそれを上回っています。 その中で181系は中速から歴然とした性能差を示しているのがわかります。2分30秒ほどで120km/hまで加速していますが、その頃、82系やDD51は本来の最高速度にすら達していません。
速度距離の関係を見たのが下の図です。
100km/hまで加速するのに181系は2km以下ですみますが、82系では3km以上必要です。
下の図は10パーミル勾配上での加速です。性能差がますます顕著になります。
181系は10パーミルでも120までじりじり加速していきますが、82系はその頃80km/hしか出ません。
次の図は20パーミルです。
こうなるとキハ58もお手上げで、ほぼ50km/hで均衡してしまいますが、181系は73km/h辺りまで加速します。
実際の走行を見てみましょう。
次の図は土讃線の土佐山田から繁藤にかけての25‰が連続する区間をキハ181系7Mとキハ58系9M2mが走行した例です。 土佐山田を出るとほどなく25‰の連続となりますが、同時に半径300mの曲線が連続するようになります。 181系はフルノッチでは曲線制限を越えるため5ノッチと6ノッチを交互に使って一定速度で登りますが、58系はフルノッチのままの登坂となります。 勾配均衡速度の差は大きく、このような線区では単に電化しただけでは速達化が図れなかったことがわかります。
次の図は板谷峠での走行シミュレーションです。 こちらはさらに過酷です。 30‰以上、最急38‰に達する急坂が連続し、気動車が単独登坂した峠でこれ以上に過酷な区間はありません。 しかも181系は付随の食堂車が入った編成であったため1割近く性能ダウンを強いられていました。
この区間ではキハ58は30分以上、キハ181でも20分近くフルノッチの連続となり、実際には1ノッチ戻すためこれより速度は低下しますが、それによって両者の差はさらに開くことになります。 さすがにこの勾配では181系も曲線制限に達することはできず、電車との運転時分差が生じていました。