運転曲線とは

 下の図が運転曲線の例です。グラフの横軸には始点からの距離がとってあり、駅の位置、勾配の位置や値が記されています。 縦軸には列車の速度がとってあり、同時に各駅を通過してからの経過時間軸も重ねてとってあります。(この例はスーパーノッチマンを使用しています。線路データは現在のもので、181系「しなの」当時とはかなり改良されています。)

決策

 図の左下、長野駅の右側に3角形の記号がありますが、これが列車の先頭が停車する位置を示します。駅中心位置から列車の長さに応じてずれます。
 曲線が2つ上に伸びていますが、上に急激に伸びているのが列車の速度と先頭位置を表す曲線です。 この曲線を追っていけば線路上のどの位置で速度が何キロ出ているかがわかります。 勾配の値によって影響を受けながら加速していき、長野駅中心位置から2キロの地点で100km/hを超えています。 この例では長野進出時に分岐器はすべて直線側としており、上のほうにある逆三角形の記号が分岐器の位置と制限速度を示しています。
 もうひとつのゆっくりと上昇する曲線は発車後の経過時間を示しています。長野中心から2キロ地点まで約1分50秒要しているのがわかります。
 長野中心から約2.5キロの地点で速度が落ち始めます。 これは前方にある85km/hの曲線制限のためにノッチオフして惰行に入ったことを示しています。 図ではわかりにくいのですが力行中は実線で描かれ、惰行中は点線となっています。
 安茂里を通過してすぐに急激に減速が始まります。 ここで先ほどの曲線制限のために制動にはいり、曲線制限の手前で緩解、ノッチを少し入れて定速走行後、最後尾が曲線を通過した時点でフルノッチとなります。
 しかし、川中島で再び曲線制限があるため90km/h手前でノッチオフ、惰行のまま勾配に任せて速度変化し、再度制動、再び
最後尾が曲線を通過した時点でフルノッチで加速、110km/hまで加速しますが篠ノ井停車に備えて惰行に移ります。

 このようにこの曲線を追っていけば列車がどんな速度でいつどこを走るかすべてわかるわけです。 そして速度制限や勾配、駅、分岐器などの線路条件、列車の性能、長さなどの車両条件、余裕の持たせ方や力行、惰行、制動の配分など運転条件を設定することでさまざまなシミュレーションが可能になります。

 これらのデータから各駅間を何分何秒で走ることができるかがわかります。これからその車両のその線路での基準運転時分というものが決まります。 基準運転時分は10秒単位、15秒単位等で表記され、たとえば15秒刻みの場合、ある駅間を3分42秒で走る場合は3分45秒が基準運転時分となり、3分48秒で走る場合は4分が基準運転時分となります。 その出力例が下の図です。

この基準運転時分を元にさまざまな調整が行われダイヤが作成され、最終的に時刻表として出回るわけです。

 昔はすべて手計算、手書きで行われ、特殊な定規や作図台を工夫していましたが、途方もない労力と時間を要したものでした。 そのため国鉄では鉄道技術研究所で1960年代からコンピュータを使う方式を研究し、70年台になって実用化されましたが、大型コンピュータを必要とし、本社など一部でしか利用できませんでした。
 一方、そのころからマイクロコンピュータなるものが登場し、民間では1980年ころすでにPC8001用のパッケージソフトとして運転曲線作成ソフトが市販されていたようです。
 しかし国鉄では処理するデータが膨大なためマイコンの利用は考えず、徐々に小型化していたミニコンやワークステーションの利用へと進みました。 これは1990年代になってワークステーション用として実用化され、ハードウェアの価格も数百万から一千万円程度で導入できるようになりました。 一方そのころ世界ではパソコンによる小規模分散処理が急激に普及し、この分野ではnotch manというMS-DOSで動くソフトが市販され、小さな鉄道会社でも気軽に導入できるようになりました。 現在では低価格のWindowsパソコンが一昔前のグラフィックワークステーションの性能をはるかに凌駕してしまいました。 鉄道ファンを対象としたスピードアップ2002というソフトまで登場しているので、個人が趣味で運転曲線を描けるというとんでもない時代になったのです。 ゲームソフト並の値段で手に入ればもう少し気軽に使えるのですが、あまり売れる分野の製品ではないのでおそらく無理な願いでしょう。
 なお、JR総研でもUNIXワークステーションでは利用が限られると判断したのか、最近Windows2000、NT用の運転曲線作成システムをSPEEDYという名で発売したようです。 本家だけに高機能が期待されますが、同サイトに価格の記載はなく営業に問い合わせろとなっており、一般庶民が扱える製品ではないのでしょう。

フリーソフトで運転曲線

 スピードアップ2002の後継としてNotch Man miniというソフトが開発され、それにはフリー版があり、仮想のデータを使用して運転曲線を作成、表示できます。 線形は本線か支線か、平坦線か山岳戦かなど特定のパターンを指定するとランダムに作成されます。 車両はユーザーの指示した特性に従い自動生成されるため、実車に完全には一致しませんがそれなりのものは作れるようです。
仮想空間の話とはいえ車両性能や走行条件はかなり詳しく設定でき、性能シミュレーションとしては本格的なもので、エネルギー消費のシミュレーションではスーパーノッチマンを超えているともいえます。 フリー版は実際の線路データや車両データが無い分コンパクトで、ダウンロード後解凍して即実行という、インストール作業がいらないものもあります。 あれこれフリーソフトをインストールしてWindowsを汚すのが嫌な人には好都合です。
 運転曲線がどのようなものかを理解するにはこれを使って実際に運転計画ごっこをやってみるのが一番でしょう。 また、これのオンラインマニュアルに運転曲線や性能シミュレーションに関するかなり詳しい解説があるので参考になるでしょう。

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