気動車はなくなるの?−2

1. 烏山線

 EV-E301系ですでに営業運転中のこの線、蓄電池の量が約半分で出力が1.5倍のこの高出力蓄電池列車を走らせたらどうなるでしょうか。
Wikipediaによると同線は最高運転速度65km/hとなっていますが、電池消費量を調べる関係上とりあえずこれを無視し車両の設計速度130km/hとします。
下の図が下り方面の運転曲線です。意外にすんなり完走してしまいました。

これは烏山方面に向かって40mほどの標高差で下り坂となっている関係で電池消費が少ないためです。
上の図では矢印の曲線が電池残量で、速度目盛がそのままkwhとなります。

では上り勾配となる上り方面はどうなるでしょうか。

案の定、こちらは電池切れです。 鴻野山手前で電池残量が0となりました。
また、電池消費を減らすため最高運転速度を本来の65km/hとすれば電池切れになるものの惰行で宝積寺まで到達は可能です。

2. 男鹿線

 こちらはEV-E801系がすでに営業運転中です。 この車両は蓄電池の量が倍になり交流高圧低電流充電が可能ですが編成出力はEV-E301系とおなじです。
電池搭載量が約四分の一しかない今回の車両で太刀打ちできるでしょうか。

船越を出たところで電池切れです。 本来の営業速度85km/hでもだめでした。 烏山線と異なり65km/hまで下げると完走します。
男鹿線の場合、始発駅、終着駅の標高差はわずかで距離も長いためです。

3. 中間駅充電設備設置

 電池容量が360kwhと大容量蓄電池車両が投入されてはいるものの実際は60kwh程度の電力で同線は走行可能なはずです。では電池をケチった今回の車両で完走するにはどうすれば良いでしょうか。
発電機がない以上、途中で充電するしかありません。 そこで同線の中間付近の交換設備のある二田駅に充電設備を設けることにしましょう。
中間駅停車中の充電ですから短時間しかできません。 有効容量50kwhの電池を0からフル充電する場合、単純には1時間で充電するなら出力50kw、6分で済ませたい場合は500kwの電源が必要です。 2分でも1500kwですから鉄道の地上電気設備として考えた場合は些細な量です。
しかし、車両側の充電回路や蓄電池側からみたら大変なことです。なにしろ600kwで駆動するように設計されたものに倍以上の電力処理を要求されることとなります。
そこで2分停車、充電量20kwhで考えてみましょう。 これなら定格容量に収まります。 2分充電ならパンタ昇降処理時間の余裕分を考えてもダイヤ上それほどデメリットとはなりません。
次の運転曲線は最高速度は85km/hとし、二田駅で20kwhの追加充電をした例です。

これで完走できます。上りもほぼ同じ状況です。

この方法で車両側の電池搭載量を大幅に減らして運転できることがわかります。
道路の電化を真剣に考えているEV技術者の気持ちがわかるものです。
ローカル線の場合、車両費、設備費ともに抑える必要があり、電池価格と充電設備の対比でどの方法が良いかということになります。 運転本数がある程度あれば車両が多数必要となり、電池を減らしたほうが有利となり、逆に運転本数が少ないと充電設備を作るより車両の搭載電池料を増やしたほうが有利となりえます。

4. 架線の撤廃?

 電化はされているものの赤字という路線もあります。 架線や変電所維持費を低減できるならあえて電化のまま残しておく必要がなくなってきます。
例えば宇野線、瀬戸大橋開通後は実質的にローカルの盲腸線となり、ディーゼル化するわけにも行かずといった状況が続いています。
このような線区は蓄電池車が有効活用できそうです。
同じ車両をここで走らせてみましょう。

宇野手前の峠越えで実質的に電池切れです。
峠越え手前八浜駅で1分10kwh充電をしてみましょう。

13kwhほど残量があります。

上りもほぼ同じ結果となり運転可能です。 同線はある程度運転本数もあり短編成列車が主体ですので案外架線を撤廃してバッテリー化する意義があるかもしれません。
今後の電池の長寿命化、低価格化次第では現実味を帯びてくるでしょう。

以上で試した線区はいずれも平坦線です。 地方ローカル線ではアップダウンが頻繁にある山岳路線が多数となります。

そこである程度勾配がきつく距離が長い路線でも試してみましょう。

 

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