気動車はなくなるの?−3
1. 津山線
この線区は短編成の気動車が1日20往復以上運転されておりローカル線の中では活気があるほうで、距離も60km近くあり峠越えもあります。 少ない電池でこの距離を走らせるには充電設備が多くなります。 牧山、金川、福渡、弓削と4箇所の充電設備と各駅での充電量を25kwhとする必要があります。 |
それでも弓削から峠越えとなり、小原発車時には電池もかなり少なく、下りで回生電力を貯めて一応全線走破という状態です。
中間充電施設をたくさん作っても流石にちょっとした峠がある線区では電池が少ないと苦戦します。
2. 中間駅充電なしでは
中間駅での充電をしない状態で走るにはどれだけ電池が必要でしょうか。 同じ車両で電池の搭載量を4倍の400kwhとし、重量増加を2トンとして計算してみます。 4倍の電池の量というのはEV-E801やJR九州のBEC819系よりやや多い量となります。 走行用として有効利用可能な容量を200kwhとしてシミュレーションしたのが次の図です。
サミット地点で約150kwh以上の電力を消費し残量は50kwhを切っていますが、その後は下り勾配のため消費はわずかでそのまま終着駅へ到着しています。 なお、この図の電池残量グラフの縮尺はこれまでの半分になっています。
これだけの電池があれば中間充電無しで少なくとも岡山津山間の各駅停車には使えそうです。 ただし、リチウムイオン蓄電池の容量は気温の影響を受け寒冷時は容量が低下します。 更に経年劣化、そしてそれを見込んだ場合に50%の放電深度で大容量の電池を使用して採算性があるかが問題です。
しかも長距離となると冷暖房の電力も侮れません。電気自動車が冷暖房を入れたら一気に航続距離が減るのと一緒です。この運転の場合、1時間を超えますので40kwh程度は冷暖房用に取る必要があります。
男鹿線でのEV-E801はおそら片道く60kwh以下で運転可能なため、360kwhの定格容量から見るとかなり慎重に電池を使っていることになります。
これだけの蓄電池システムとなると数千万円はするためおいそれと使い捨てにはできません。 東芝のSCiBという蓄電池なら大出力で放電深度を非常に深くとっても長寿命、低音での性能低下が少ないという特徴があります。まさに鉄道車両用に向いた電池でJR貨物のHD300やJR西日本の瑞風での採用実績もありますがまだまだ高価です。
一方で自動車用では低価格化が進み、2030年までには有効容量1kwhあたり1万円の価格が実現されるのではとも言われています。 もし長寿命の蓄電池がこのような価格で実用化された場合、かなり高性能の蓄電池列車が現実のものとなります。
そうした近未来を想定して優等列車の蓄電池シミュレーションをやってみましょう。