気動車はなくなるの?

1. すべてが電気式へ

 いよいよ平成も終わろうとしている今年、このサイトを立ち上げてすでに20年が経とうとしています。 当時はまだキハ181が細々とですが国内で走っていました。
しかしそのキハ181は日本から消えミャンマーで余生を送り、1両900馬力の振り子式気動車特急が当たり前となり気動車界も大きく様変わりしました。
一方で高速非電化運転の最後の期待の星とも言えたJR北海道は様々な不祥事と経営悪化でキハ287を断念、スピードダウンを招く有様、そして自動車業界では欧州でディーゼル車両販売禁止を見据えた動きが出る始末。
 排ガス対策もある程度進み、燃費の良いディーゼル車両もしばらくは安泰だろうと楽観視してはいられない時代となりました。 その背景には電動化技術の急激な進歩があります。
ハイブリッド気動車のページを追加してからすでに15年、まだまだ先の技術と当時は思われていた蓄電池車両がいよいよ現実のものになる時代を迎えようとしています。

2. バッテリー車両

 15年前には性能的にも価格的にも問題の多かった車両用リチウムイオン2次電池は現在その姿を大きく変えつつあります。 特にトヨタが全個体電池の実用化を宣言して以来、様々な方面で電池技術の革新を伝えるニュースが相次ぎ、JRでもすでにバッテリー車両を試験導入しはじめたのです。 電池価格が下がったとはいえ従来のディーゼル車両に対して価格的に太刀打ちできませんが、今後の自動車業界の進展によっては予想以上の変化をもたらす可能性があります。
 非電化優等列車には電池容量不足、地方閑散線には価格的な面で導入は進まないだろうという予測も変わってくる可能性があります。

3. 自動車での問題

 自動車用蓄電池を考える場合、航続距離が問題にされます。 電池技術がいくら進むとは言ってもエネルギー密度でガソリンや軽油には遠く及びません。 例えば2025年ごろの電池技術で600キロの航続距離がある乗用車を作る場合、乗車人員よりも重い蓄電池を常時運ばなければならないという滑稽な乗用車になります。 そしてこの電池を家庭でフル充電しようとしたら数日かかるという話になりかねません。 急速充電設備が普及するのではという意見もありますが、この電池を20分でフル充電しようとしたら500馬力ほどの給電設備が必要で、同時に何台にも対応しないといけない充電スタンドは巨大な変電所になるか、巨大な蓄電池をそなえるか、はたまた大出力のガスタービン発電機でも備えないと需要を賄えないことになります。
 そしてこの電力を送る電線がまた大変です。電圧が低い分大電流が必要で太く重くなり、更に冷却も大変です。 水冷ケーブルなどが作られていますがまだまだ容量は不足しています。
 特殊な磁界結合による非接触充電も開発されていますが給電ケーブルの問題は解消しても急速充電するには自動車側にもそれなりに大きな重い受電コイルを積む必要があり、急速充電には不向きです。
 もう一つ深刻な問題となる点に資源枯渇の問題があります。 なにしろ自動車の場合台数が途方もなく多いため、1台に長い航続距離を可能とする量の電池を搭載した場合、販売台数の多くを電気自動車が占めるようになるととても資源が追いつきません。ナトリウムイオン電池など資源の心配のない電池の研究もされていますが実用化はまだまだ先です。
 この問題を解決するため、自動車業界でも道路の電化を真面目に考えている技術者が多くいます。 道路から給電可能となれば搭載電池量は大きく減らすことができるからです。信号の前後に非接触給電コイルを埋め込み信号待ちの間に充電するだけで少ない電池でかなりの長距離走行を可能とする案です。

4. 鉄道のメリット

 鉄道でバッテリー列車を考える場合、鉄道特有のメリットを享受できます。 駅停車中に充電するのであれば駅構内だけ電化して架線を貼りパンタグラフから給電すれば済むのです。 ローカル線なら短編成ですから大型バスや大型トラックで考えられているバッテリー化システムがそのまま応用できます。 駅の給電設備は必要ですが、全線電化と比べたら圧倒的に低価格でしかも電気設備の維持費は大幅に削減可能です。 しかも中間点に給電設備を設ければ搭載する電池の量を減らすことができ、車両価格も普通の電車に近づけることができ、ディーゼル車両にとってはかなり脅威になる可能性があります。
さらに既存の非採算電化路線すら電化設備維持費削減のため架線を撤廃するという選択tも視野に入ってきます。

5. シミュレーション

 ちょうどノッチマンが新しくなり、バッテリー車両のシミュレーションが可能になったので、気動車の存在を脅かしかねないこのバッテリー車両問題についてシミュレーションしてみましょう。

 まず車両設定です。 ローカル向けに積車重量46トンの2両編成とし、電池は付随車に100kwhの容量のものを搭載、冷暖房や補機駆動の分も考慮して走行用に全容量の50%を割り当て可能としました。そのため有効容量は編成で50kwhとします。これは1日に頻回充放電するような用途での従来のリチウムイオン2次電池の使い方からするとかなり過酷な条件となるようです。
とりあえずは現行でこれが可能な東芝のSCiBのような電池に期待することとします。結局放電深度は電池寿命と深く関係し電池交換頻度に影響するため、電池性能と電池価格で決めることとなりまあす。

電動機総出力は600kwで現在の平均的な電動車といった設定です。

電池効率は85%で充放電制御回路の損失を含みます。

この車両は電池の量としてはJR九州やJR東北が運転中の蓄電池車両の半分から1/4と少なく短距離しか走行できませんが放電深度を深めに設定しているためある程度の距離は走行可能です。

一方で出力は優等列車転用を試すため1.5倍以上強力なものとしました。

 

 引張力は左のようになります。

動輪周出力は538.9kw、起動引張力は7141.7kg、定格速度は27.7km/hと駅間の短いローカル線運用を考慮して低速加速重視の設定です。

 回生制動力は左のようになります。

とりあえず主回路と電池への負担を減らすため引張力と同じに設定してみました。

この場合、中速域から高速域は摩擦ブレーキに依存する率が高くなり回生率が低下しますがとりあえずはこの値で試します。

炭化珪素素子や大電流充電可能な電池を採用すればより高速域からの回生性能を高めることができますがとりあえず車両価格を抑えるためここではあえて控え気味としました。

 電力消費は左のようになります。

薄い赤線が動輪周出力で、これとの差が損失を表します。

 回生電力は左のようになります。

薄い赤線が制動力による動輪周での吸収エネルギーでこれとの差が回生損失を表します。

 加速力は左のようになります。

ローカル線運用としては十分な性能です。
速度種別もA9程度あり、ちょっとした優等列車運用にも使えそうです。

この車両で走行シミュレーションをやってみましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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