キハ181系FAQ

あのキーンは何の音?  あれは過給器と呼ばれるものの発する音で、181系の場合は排気ガスで羽根車を回し、その力で送風機を回してエンジンに大量の空気を送り込む排気ガスタービン方式です。ようするに小型のガスタービンエンジンのようなもので、ガスタービンやジェットエンジンと似た音となります。小型なため回転数はジェットエンジンより一桁多く、毎分10万回転以上で回ります。 高周波の風切り音と音速を超えた流速でぶつかるガスとタービン翼端の発する衝撃波が吸排気系に響いてあの音が発生するのです。


なぜ181系だけキーンというの? 排気タービン式過給器(つまりターボチャージャー)をつけたディーゼルエンジンは大なり小なりキーンというターボ音が出ます。音の大小、音色はおそらくタービンの大きさ、回転数、給排気系の配管、消音機などで変わると思います。高周波音は消音されやすいので余計差がつくのかもしれません。宮崎のDF50は181系並にターボ音の大きなものがいましたし、DD51やDE10などもキーンとまではいきませんが比較的ターボ音が響くほうでしょう。 181系よりも小径のターボに改良されたキハ65の一部にもキーンというのがいましたが、如何せん、変速で引っ張るのは50km/hちょっと位だったため十分に鑑賞できなかったものです。
 海外ではイギリスのインターシティ125についている両端の動力車がかなり甲高いターボ音を響かせています。 最近はようつべなどビデオ投稿サイトに聞き応えのあるのが多数収録されています。

http://youtube.com/watch?v=fWnPil_-i3Y&mode=related&search=

http://youtube.com/watch?v=HAfijWFQOTU&mode=related&search=

http://youtube.com/watch?v=zsky6_lhJSk&mode=related&search=

http://youtube.com/watch?v=DoZ4qJj7laQ&mode=related&search=

http://youtube.com/watch?v=6lBo7eBVOWw

フランスのディーゼル機関車CC 72000(16気筒3650馬力)
http://youtube.com/watch?v=vNLzWZ6e7QA

http://youtube.com/watch?v=fXsUdS3rnrw&mode=related&search=

181系は何キロ出る?  実際には速度向上試験をやっていないのでわかりません。しかし、10‰均衡速度132km/hという性能を考えるとかなり出ると考えられます。ディーゼルは電動機と異なり高速域で回転数が上がっても回転力があまり落ちない傾向があり、130km/h付近での加速余力からすると空気抵抗が増えてもまだ加速しそうです。「定格では100km/h」で書きましたが車輪が新品で磨耗がない状態なら機関回転数2000rpmで137km/hでます。notch manでシミュレートしてもまだ余力があります。問題はエンジンをどこまで回せるかです。181系の機関保護回路は最高2200rpmで燃料を切るように設定されており、このときの速度は150km/h、加速余力は約5kg/t(5‰を上る力)程度と推定されます。 実車では2000rpmを超えると燃料は自動的に絞られ、トルクは低下します。 この保護機能を無効にして2200rpmまでまわせば150km/hはほぼ確実に出るでしょう。 しかし、機関出力は650馬力に達し、まさにフランスのTGVが515km/hを出したときのような過負荷状態となるでしょう。
板谷峠では何キロ?  181系「つばさ」が単独で登坂していたころのキサシつき12両編成(11M1T)は33‰を6ノッチ50km/h、5ノッチ40km/hで走れます。連続登板では5ノッチ運転となるので40km/hで走っていたことになります。 ちなみに オールM編成ならそれぞれ55km/h、45km/hに向上します。
 一方、485系は65km/hが定格速度で、短時間なら82km/h出せます。
電車は平気で板谷峠を登ったのか?  33パーミル自力登坂でも書きましたが、当時は電車にとってもあの峠は試練でした。上記のような勾配均衡速度から考えると軽く越えてしまうように見えますが、80km/hまで加速するのに5分間も20%過電流運転を強いられます。
 怖いのが故障です。降雪地帯のため電気系統のトラブルがまれに発生することがあり、1ユニットカットすると960KWのパワーダウンとなり、181系以上に打撃は大きくなります。 下の図が正常状態と1ユニットカットしたときの加速力曲線です。33‰の途中で停車した場合、起動が非常に苦しく、乗客が少なければ何とかなるかもしれませんが、乗車率100%ではままなりません。

 たとえ起動できたとしてもその後の加速は悲惨です。抵抗制御の電車の加速力曲線は平均値が示されているわけで、定加速領域といえども実際はのこぎり状に変化するため、状況によっては限流器が動作せず制御器のカムが進段しないままになる可能性もあります。下の図はうまく制御器が進段したとしての加速を示していますが、とてもこれでは営業にはなりません。

そのため実際の運転では故障時、急遽EF71の応援を仰ぐという珍事が見られたのです。
 もちろん、現在の特急電車であれば出力に余裕があり、しかも誘導電動機のため過負荷容量が大きく、485系時代のようなことはなくなっています。

25‰では何キロ? 12両編成(11M1T)は6ノッチ65km/h、5ノッチ55km/hで走れます。オールM編成ならそれぞれ69km/h、59km/hに向上します。
10‰では何キロ? 12両編成(11M1T)は6ノッチ131km/h、5ノッチ121km/hで走れます。オールM編成ならそれぞれ132km/h、127km/hに向上します。

 参考までにノッチ別の加速力曲線をお示しします。 編成はキハ181系7M、連続定格3500馬力、換算重量350.0トンで計算したものです。 6ノッチと5ノッチは国鉄の資料によるもので、それ以外は機関コンバーター回転数特性から推定したものです。

速度種別(速度記号)とは?  上記の10‰均衡速度を記号で表記したものです。速度の10の位をアルファベット、1の位を数字で表します。100km/hを「A」、90km/hを「B」、80km/hを「C」と順次あらわし、たとえば181系11M1TならA31となります。
速度種別は列車の性能を正確に表すのか?  上記のように速度種別は単に10‰均衡速度を表したものです。 もし181系に2種類あったとして、それぞれ変速直結の切り替え速度が50km/hと86km/hだったとします。 この場合、両者の速度種別はA32と同じですが、性能は大きく異なってきます。 速度による引張力の変動具合がよく似た車両間で初めて正確な対比ができるのです。 また、走行する線区の性格によっても速度種別の持つ意義が変わってきます。 181系の場合、東北本線ではその速度種別はほぼ正確に性能を表現していたと言えますが、板谷峠ではA22しかない交流運転の485系のほうがずっと高性能なのです。 
 性能(加速性能、登坂性能、最高許容速度)などを正確に表現するには加速力曲線を見る必要がありますが、比較的勾配が緩い区間ではこの「速度種別」記号で実用的な性能の比較が出来るため常用されています。
 なお、最近のいわゆる900馬力級強力気動車、201、261、187などではやや事情が異なって来ています。 減速比さえ変更すれば200km/h程度出せるエンジンを搭載しながら営業速度の関係で減速比は130〜140km/h向けに設定されています。 そのため最高許容速度はエンジン回転の制約から営業速度+α程度となり、それがそのまま速度種別になっている例が増えています。 例えばキハ187では速度種別が181系と3km/hの差ですが、実際の加速性能は中間変速機を使わない最終段だけで比べても2倍の開きがあるのです。
起動加速度は列車の性能を正確に表すのか?  速度種別とともに列車性能の指標として起動加速度がしばしば用いられ、電車の諸元表ではおなじみの数値です。 さて、この起動加速度、やはり上述の速度種別と同様、ある一点の性能を示す数値で、やはり全体の性能を表すものではありません。 速度種別の説明でおわかりのように動力装置により引張力特性が異なり、これが異なるもの同士ではやはり対比は出来ないのです。
 このサイトを一通りお読みいただいたらすでにお気づきかと思いますが、車両の引張力特性というものは動力源によって大きく異なります。 最も異なる性格を持つものは液体式気動車と電車です(右図赤線183系NN、黒線383系)。 直結1段のガスタービン(独立出力タービン方式)が両者の中間的な性格です(緑線)。 もうひとつのタイプとして速度に無関係にほぼ一定の動輪周出力を発生する性格のものがあります。 その代表例は直結段をもたない多段液体式(DD51等)あるいは電気式ディーゼル機関車(水色線DF200)で、蒸気機関車もこれに近い性格を持っています。
 通常、性能の指標として起動加速度を使うのは電車で、気動車でこれを使うことはありません。 電車は起動後営業運転速度の40%から60%程度までほぼ起動加速度程度の加速度を保ったまま加速します。 そのためこの数値が性能判断の有効な指標となるのです。 ところが液体変速機を持つ気動車の場合、起動トルクはエンジントルクの4〜5倍に達するものの、速度が営業速度の半分になるとトルクは1/3以下に落ちてしまうのです。 つまり、液体式気動車の場合、速度種別、起動加速度だけを見るといずれも電車より相対的に高い数値が出やすいのです。
 特急用で起動加速度が2.0km/h/sを超えていれば383系並の高性能車ですが、気動車なら82系編成で優に超えています。
加速力曲線を読むには?  当サイトではしばしば加速力曲線を使用していますが、一般にはあまりなじみのない資料のようです。 読み方は簡単で、これに加速性能のほぼすべてが入っているのでぜひ読み方をマスターしましょう。
 加速力曲線の横軸は速度で日本の鉄道ではkm/hの単位でメモリが刻まれています。 一方縦軸は列車を前に進めるための動輪周引張力(摩擦や空気抵抗を差し引いたもの)を列車の重量で割った数値を示すもので、kg/tという単位が使われ、これがなじめないようです。
 例えば起動引張力21トン発生する性能の機関車が牽引する列車全体の総重量が500トンあったとします。 起動抵抗(車輪とレールの摩擦、車軸の摩擦など抵抗が1トンあったとすると、有効な引張力は21−1=20トン、列車全体のトン当たり引張力は20/500=0.04(t/t)、つまり40kg/tとなるのです。 そしてその40という数値は40‰の抵抗と同じで、40‰を起動(正確には均衡、この場合は静止)するのに必要な力があるという意味になります。
 速度目盛り90の時曲線が25kg.tのところにある場合、この列車は25‰を95km/hまで加速する性能を持っていることになります。
  このことから上述の速度種別を読み取るには縦軸の10の目盛りと曲線が交差する位置の横軸目盛りを読めばよいのです。
 kg/tを単位とすることで‰単位の勾配抵抗と数値が一致し鉄道では便利なためこのkg/tという単位が利用されます。 なお、物理学では力をニュートン(N)という単位で扱う関係で鉄道でも引張力をKN(1000N)という単位で扱う例が増えています。
 しかし実際の運転ではkg/tという単位は直感的でなく、速度計の針の動きをより直感的に表現したkm/h/sという単位も加速度の表現によく使われます。 これは速度をkm/hで表すとき、毎秒いくら数値が増減するかを示しています。 上欄の起動加速度ではこの値がよく使われます。 kg/tとkm/h/sの関係は計算で求めることが出来ます。 kg/tという加速度を物理学で普通に使うm/s/sにするには m/s/s=kg/t*9.8/1000と計算します。 そしてm/s/sをkm/h/sにするには、km/h/s=m/h/s*3600/1000となり、最終的に,、

km/h/s=kg/t*9.8/1000*3600/1000

という計算式で換算することが出来ます。
 つまり33‰の勾配を一定速度で登る性能というのは平坦線でその速度から加速した場合、約1.1km/h/sの加速度を発生するということになります。
 なお、ここで注意が必要です。 加速力曲線から列車の純粋な加速度を計算する場合、回転体、つまり車輪や電動機など列車の加速とともに回転が増えるものの慣性抵抗は別に考慮しなければなりません。 回転体でも軽いものは無視してかまいませんが、電動機や車輪は無視できません。 客車や付随車で5%、電動車の多い電車では8%程度加速力が吸収されます。 そのため上の式は次のように修正して列車構成により計算しなおす必要があります。

km/h/s=kg/t*(1-0.05〜0.08)*9.8/1000*3600/1000

なぜ速度計の目盛りが120までしかないの?

 確かにこれだけ高速運転ができる181系の速度計が120までしか刻まれていないのは不思議です。営業運転速度が120km/hだからそれでいいと言われればそうですが。確かに当時の急行電車でも最高許容速度は140km/h、速度種別はA17前後に達しますが計器の目盛りは120km/hまでです。営業速度が110km/hですから問題ないわけです。 それなら特急電車も120km/hでよいではないかとなるのですが・・・・163km/hの記録を持つ特急電車のメンツがあったのかもしれません。
 なお、181系でも助手席側にタコグラフがついていたのですが、これは140km/hまでの速度計がセットされていました。 また、気動車で160km/hの速度計を始めて取り付けられたのはガスタービン試験車でした。
 この時代の速度計は車軸につけた発電機(タコジェネレーター)の電圧を測定する方式で、当時のものは直線性が悪く写真のように目盛りが等間隔にならず、高速域ほど間隔が広くなっているのも特徴です。

181系の130キロ改造は可能?  上に書いたように高速性能は余力があるため、183系と同じことをやれば基本的に可能です。車輪が交換直前の直径(780mm)で機関常用最高回転数である2000rpmの時130km/hが出せるように減速歯車を変更し、ブレーキの応答性改善、滑走防止装置の付加を行う必要があります。 しかし、車齢と需要、費用対効果が問題です。 大阪ー姫路で分岐器直線側100km/h通過のままでは20秒程度の短縮にしかなりません。
ディーゼルで高速列車は作れるか?  海外の例から見ると200km/hまでならやれるようで、特殊な構造のタルゴでは215km/h(英文)まで可能となっています。 すでに30年以上も前からイギリスのインターシティー125は200km/hの営業運転をディーゼルでやっています。 これは電気式のプッシュプル方式でしたが、最近では19リッター750馬力のカミンズ製エンジンを床下に積んだ200km/h運転可能な電気式振子気動車ICET-D(英文)をドイツが導入、高効率の動力伝達装置により電気式の重量増による性能低下を補っています。一方、イギリスでは同じエンジンを積んだ液体式気動車(こちらも英文です悪しからず)を投入、従来の160km/h運転用気動車を置き換えています。 ただ、両者とも加速性能ではインターシティ125からあまり進歩はなく、このあたりがディーゼルの限界とも思えます。 

 日本ではすでに900馬力ものエンジンを床下に積んだ気動車が実現しています。 187系であれば車体が小さく多段式直結変速とともに重量あたりの動輪周出力はクラス180より5割近く強力になっています。 高速での走行安定性を確保し、走行抵抗を削減すれば十分に非電化新幹線用の気動車を実現できるはずです。

 ただし、如何せん、加速性能は悲惨で、たとえば上記のクラス180では200km/hまで6分もフルノッチのまま力行となり、ちょっとでも登り坂があると加速は頭打ちという状況です。
 0系電車でも4分30秒ほど、700系の高加速設定にいたっては2分で200km/hまで加速しますからその差は歴然としたものがあります。100km/hから200km/hとなるともっと差が大きくなり、0系が2分50秒、700系が1分20秒で加速するのに対し、クラス180ではなんと5分もかかってしまいます。
 今の新幹線並みの加速力と最高速度を実現しようとすると1両2000馬力程度に出力を向上しないとだめで、これは現在のディーゼル技術をもってしても客室を埋めるほどの機械室を必要とし機関車級の軸重となってしまいす。 もしこれをインターシティー125で実現しようとすると両端の動力車は1両7000馬力近く必要となり、ガスタービン以外に選択肢はなくなります。
 勾配がほとんどなく直線ばかりで加減速があまり要らない高規格路線を作れば200km/h運転も十分可能ですが、これでは建設費が膨大となり非電化新幹線の本来の目的から外れてしまいます。

なぜ変速運転、直結運転の2段切り替えしかないのか?  現在の気動車は変速(液体変速機使用段)が1段、直結後、ギアチェンジが2段から4段という変速機です。これはエンジンや変速機の回転数を精密に計測制御する技術が実用化されて初めて実現されたものです。キハ181以前にキハ60という試作車があり、2速の直結段が検討されましたが、結局実用化できませんでした。

変速機の入力側と出力側の回転数に差があると変速時に大きな衝撃がかかり、変速機やクラッチを破損してしまうのです。特に直結状態では液体変速機の持つショック吸収作用を利用できないためますます厳しくなります。
 当時の自動車ではすでに多段式ATが使われていましたが、液体変速機を介した状態でギアチェンジを行うものでした。当時でもドイツのメキドロ社が優れた精密機械技術に物を言わせて鉄道用に同様の仕組みの大容量変速機を開発しており、それがDD54に使われたことは有名です。 しかし駆動系の衝撃が大きく、故障が多発、推進軸が折れる事故まで発生しました。
 もしこの変速機(4速切り替え)を181に使用していたら10‰勾配で108km/h程度しか出ません。液体変速機の伝達効率の悪さが裏目に出てしまい直結方式のほうが高性能となってまうのです。
181はオートマ?  181は自動変速です。変速から直結へ切り替わるのは変速機の出力側が入力側の70%の回転数になったときに行われます。車輪の磨耗状態にもよりますが、フルノッチでは86km/h前後、2ノッチで50kmあたりになります。この速度になるといったんクラッチを切り、エンジン回転数を70%まで落として直結へ移行します。一連の過程はリレー回路で自動化されていました。エンジン音を気にしていない限り基本的に乗客が気づくことはありませんでしたが、当時の技術では検知制御精度が低く、時には粗雑な運転士が運転する82系なみに「ドッスン」という音と衝撃を響かせて直結に入る車両もありました。
 直結から変速への切り替えも自動ですが、これは若干操作が必要です。直結状態で走行中に速度が落ちると、45km./hあたりで自動的に変速段にシフトします。これはノッチには関係なく、フルノッチ(6ノッチ)でも1ノッチでも同じです。これはエンスト防止のためです。 また、45km./h以上で直結状態になっていれば1ノッチから6ノッチまでノッチ位置に関係なく直結が保たれます。 これは燃費を考慮したためで、加速力をあまり必要としないときには効率の悪い液体変速機をできるだけ使用しないようにするためです。たとえば14‰を60km/h程度でゆっくり上りたいとき、変速4ノッチを使うよりは直結で5ノッチから6ノッチを使ったほうが30%近く燃費がよくなります。
 では直結でゆっくり走っているときにダッシュしたくなったときはどうするか? そのためにキックダウンノッチを設けていました。 つまり181には本来のフルノッチのもうひとつ上のノッチがあり、7ノッチがキックダウン専用に使用されました。キックダウンというのは自動車でATをシフトダウンしたいとき、アクセルを奥まで踏み込むことから来た言葉です。 181はマスコンのそばにノッチ数が白地を背景に表示されますが、7ノッチだけは赤表示でキックダウンを表していました。 7ノッチに入れたら何キロでも変速段にシフトするというわけではなく、加速時には変速運転する80km/hで7ノッチに入れてもキックダウンされません。 機関保護と効率を考えた設定で、キックダウンできる最高速度は71km/h前後となっていました。
 一方、直結フルノッチでは力不足、変速フルノッチでは過剰というとき、いちいち7ノッチまで持っていってキックダウンし、5ノッチ、4ノッチあたりまで戻すのは面倒です。実際の運転では18‰〜25‰上りを曲線制限を受けて60〜70km/hで走る場合です。 この目的のために米子区で開発されたのがキックダウン専用のボタンで、KDPB(キックダウンプッシュボタン)と呼ばれました。 前後動式のマスコンレバーを左手で握った時ちょうど親指で押せる位置に設置され、必要ノッチまでノッチアップしてこれを押すとそのノッチで変速運転に移行できる装置でした。
 
181系はなぜ出足が鈍い?  181系のトルコンは中間速度域での加速力低下を抑えるために変速運転で高速まで引っ張ることのできるトルコンを採用しており、起動トルクが弱くなります。 一方、旧系列の気動車では181系のものとは構成の異なるトルコンを使用しており、低速トルクが強いものの速度と伴に急激にトルクが低下するタイプが採用されていました。 181のオールM編成ではエンジンがほぼ最高回転数で回っていても起動加速力が70kg/tですが、キハ58ではエンジンが定格回転数に達していないのに90kg/tに達します。 しかも181は速比検知による自動進段の変速機の関係から発車時のノッチアップでも自動的にエンジン回転が制御されしゃくるようにエンジン音が変化し、回転数検地が終了してからクラッチが作動しておもむろに起動していくような印象を与え、余計出足が悪いように見えます。
 しかし、少し動き出すとキハ58などでは急激に加速力が落ちますが、181では比較的落ちが緩やかで、15km/hあたりからはキハ58編成を大きく引き離すことになります。
なぜ自然冷却に?  エンジンの出力をできるだけ走行用にまわし、同時に冷却ファンや冷却駆動装置を無くして保守費用の低減を目指したからです。冷却ファンをなくすことで数パーセント実効性能を向上でき、屋根上に大きなラジエータを並べて多少重くなっても性能面と保守費の面で有利と判断したためです。 当時、1両1エンジンによる保守費用低減は重要な目標とされ、大出力機関1台搭載気動車への期待は大きいものがありました。
 実際には自然冷却システムは低速力行時の冷却能力不足に悩まされることになり、181系が最後となってしまいました。 しかも181系では床下に補助の強制冷却ラジエータを備え、91系では屋根上に強制送風機を並べるという荒業をやることとなり、結局これでも冷却性能の問題は解決しなかったようです。 しかもこれら補助冷却装置の保守が必要となり、本来の目的は達成できませんでした。
なぜ先頭車は屋根にラジエータがないの?  先頭車は床下に500馬力の走行用エンジンと230馬力の発電セットを搭載しているため、非常に重くなります。強制冷却のラジエータのほうが軽量になるため、これら2台のエンジンを冷却する強制冷却機を運転台後部に設けたのです。こうすることで730馬力のエンジンと180KWの発電機を搭載しても何とか45トン以下に収めることができました。 82系の倍の冷却容量が必要なため機械室も大きくなりました。
燃費はどのくらい?  DML30HS系は1時間に馬力あたり180gほど消費します。 500馬力なら軽油で110リットルくらいになります。 「しなの」編成(8M1T)で名古屋ー長野間をシミュレートすると、約1700リットル消費し、1両について見るとリッター1.3キロ程度走ることになり、車体の大きさからすると以外に燃費がいいとも思えます。
 類似の条件で85系を使ってシミュレーションをやってみるとリッター当たり約1.8キロとなり、直噴化、直結2段変速による低燃費化の効果がかなり現れます。
ハイブリッド気動車はどうなるか?  JR東日本で試験を開始し、JR北海道でもパラレル方式の試作車を開発しており楽しみですが、重量増が致命的な高速列車や山岳線用列車には重量増を伴うハイブリッド化は不利で、繰り返しの加減速で省エネを期待でき、列車密度がある程度ある各駅停車列車が対象となります。 日本ではそのような線区は大半が電化されており、実際の需要がどの程度あるか難しい面があります。
 ドイツでは2000年に試作したフライホイールに電力を貯める方式のハイブリッド気動車がまもなく営業に入ると報じられましたがうまくいっていないようです。 これは高速志向ではありませんが、1軸連接、低床構造となっています。 そして屋根上にラジエータを載せた181系くらいで驚いてはいけません、なんとにエンジンや発電機も屋根上に載せてしまったのです。 181も畏れ入るような気動車です。 とりあえずJR東日本のものは無難に普通のバッテリーを使ったシリーズハイブリッド気動車として登場、将来を見越してリチウムイオン2次電池を採用、必要最低限の容量を確保することで極力重量増を避け、電気式トランスミッションでも25‰均衡速度60km/hを達成、何とか現行の近郊用気動車並みの性能を確保しています。 北海道の計画はディーゼルエンジン駆動を主とし、高速性を追求した仕様となるようで、特急車としての完成が楽しみです。
 しかし今の技術がいかに進んだとはいえディーゼルと組んだ場合電気式トランスミッションは液体式あるいは機械式トランスミッションよりずっと重く、それにバッテリーまで加えるとなるとかなり厳しくなります。 発電機は高速回転にすると劇的に軽量化されるので、ガスタービンと組み合わせると有利になるかもしれません。 しかし数百KWの小型ガスタービンは当分ディーゼル並の燃費は無理で、半集中式か電源車方式にして中型のガスタービンを使わないと効率面で難しいでしょう。
 ローカル線向けの気動車ならディーゼルで実用的なものが作れるでしょうが、車両価格が大きな障害となります。 キハ40が細々と走っているような線区に非常に高価なハイブリッド気動車を投入することはまったくの夢物語と言えます。 自動車業界の趨勢によっては比較的早い時期に燃料電池車が登場する可能性がありますが、価格的にはハイブリッドディーゼル車よりもはるかに難しい問題を抱えているのが現状です。 これらのハイブリッド車両が採算面で妥当なのは電化された大都市近郊線という矛盾が生じます。 現在の液体式気動車が如何に価格的にこなれた技術であるかが痛感させられます。
なぜあんな運転台に?  新幹線0系電車が横軸式マスコンの走りですがブレーキは縦軸方式のまま残りました。当時、人間工学という言葉が鉄道業界でもはやりで、しかも181系というか、91系の設計には航空関係の技術者が関与しており、自然に飛行機のコックピットに近づいたのかも知れません。前に押すことで作用するというのは航空機と同じです。パネルの色、表示灯なども航空機に近く、視認性を追求したものとなっていました。 電車では高速運転用試験電車クモハ591に採用され、キハ391ガスタービン動車にも採用されましたが、その後は従来の運転台に戻り、ワンハンドル化で再び横軸になって行きました。


キハ181系を運転できるゲームは?  マイクロソフトのトレインシミュレータトワイライトエクスプレスのアドオンを組み込めば可能です。 しかし、キーンは聞こえませんし、ひとつの気動車の特性データを元に出力と起動引張力だけで181をまねなければならず性能設定はひどく大まかです。それでも鉄道ものとしては車窓はそれなりにきれいで一般的な面白みが多い無難なゲームですのでそれなりに雰囲気は楽しめるでしょう。
 BVEというフリーソフトがあり、硬派の運転ゲームマニアには面白いソフトで、181のデータを誰かが作れば運転を楽しめるようになります。 しかし、残念ながら列車性能は電動機の特性データを元に近似する方式のため、液体変速機と直結段を持つ気動車の加速力曲線は近似できません。 国内や世界でも液体式気動車のデータを公開しているサイトがかなりありますが加速特性はでたらめになっています。
 ノッチマンに付属する手動運転機能を使えば性能面では一番実物に近くなりますが、フルノッチのデータを元に車両特性に応じて低ノッチを近似するため低ノッチでは誤差があります。 しかも仕事に使うソフトですからものすごく高価、運転曲線だけを見ながらの運転ではあまりに殺風景です。
 個人的にはノッチマン並みの精度のデータを扱えるマイクロソフトのトレインシミュレータが登場すれば買うでしょうし、BVEも同様にノッチマン並の性能データが扱えれば181系や91系のデータを作って楽しみたいなと妄想しています。「181はオートマ?」の項で書いた内容まで再現するとなるとソフトそのものを自作するしかないでしょうけど・・・・・
当時、「北斗」に181系を投入していたらあんな悲惨な目には遭わなかったのではないか?

 

 確かにその可能性は高いと思います。 国鉄時代は何事もお上のお許しを得てという難しい時代で、同列車をいきなり120キロ運転というわけには行かなかったかもしれません。 しかし強固な線路構造を持っていたこの区間、特例をうまく使っていち早く120キロ運転による速達化を果たしていたら、当時でもある程度の効果はあったでしょう。
 181系の故障多発の最大の原因は連続変速フルノッチ低速走行ですから、他のページで度々記しているように直結運転が主体の函館・室蘭線ではちょうど「つばさ」の上野ー福島間、「おき」の大阪ー倉敷間のような走行条件となり、当時これらの列車がこの区間で特別な問題がなかったように「北斗」でも快調に走った可能性があります。 やや無謀ですが別項で183系(NN)との130キロ対比で運転時分の例を示したように130キロ運転を行っていても故障多発という憂き目に遭うことはなかったかもしれません。
 実際、183系500番代はまさに適正化された安定性能時代の181系とほぼ同等の性能を持たせた気動車で、その安定した活躍は今さら問題になるものではありません。
 ただし、冬季に北海道の内陸での使用を考えると181系の冷却システム、車体など根本設計から見直す必要があり、当時はエンジントラブルの解消で精一杯という状況で北海道向けの新車を作る余裕は国鉄にはなかったのでしょう。 おりしも極寒の環境が大好きなガスタービンによる高速振子気動車の構想が出ていた時期で、今更内地向け設計の寒さに弱いディーゼル動車を敢えて改造して持っていくなんて無意味だと考えたのかもしれません。
 現実問題としては183系500番代クラスの気動車はもっと早い時期に実現してしかるべき気動車でしたが、オイルショック以降で財政難と労使問題に疲弊した当時の国鉄には高性能気動車に対してそれだけの意欲はなく、初代183系に甘んじることとなったのです。

[この窓を閉じる]  [ホームページを表示する]